2025年7月7日 低スペック PC 活用ノウハウ Linux Mint (Cinnamon) の使い方 その-11 ONLYOFFICE を使う
Linuxでのオフィスアプリは、「LibreOffice」や「WPS Office」を使ってきたが、イマイチ馴染めないでいたところ、ラトビアが発祥の「ONLYOFFICE」というオフィススイートがあることを知った。
ONLYOFFICEをインストールしてみると、インターフェイスとファイルフォーマットが Microsoft Officeに酷似しており、xlsxやpptxも問題なく表示されるので、Windows PC と Linux での相互運用性が高まりそうだ。
1. ONLYOFFICE とは
ONLYOFFICE(オウンリーオフィス) は、 Word・Excel・PowerPoint に相当する機能を持つオープンソースのオフィススイートです。
主な特徴: ●高いMS Office互換性:ファイルを開いた際のレイアウト崩れが非常に少ない。 ●モダンで直感的なUI:MS Officeによく似たタブ形式のインターフェースで、直感的に操作できます。 ●無償で利用可能:デスクトップ版は個人利用・商用利用を問わず完全に無料で利用できます。 ●クロスプラットフォーム:Linux、Windows、macOSのほか、iOSやAndroidのモバイルアプリも提供されています。 ●豊富な機能:文書作成、表計算、プレゼンテーション作成に加え、PDFの閲覧・注釈付け、フォーム作成機能も備えています。
豊富な機能。
クロスプラットフォーム。
ONLYOFFICE Desktop Editors は、 Windows、Linux、macOSで利用できる無料のオフィススイートです。 テキスト文書、スプレッドシート、プレゼンテーション、記入可能なフォーム、PDFファイルを編集できます。 また、ONLYOFFICEや他のクラウドサービスと連携して共同編集も可能です。
ONLYOFFICE の公式サイト
2. Linux Mintでのインストール要領
ソフトウェアマネージャーを立ち上げ、「ONLYOFFICE」で検索すると、ONLYOFFICE Desktop Editors が見つかるので、これをクリックする。
ONLYOFFICE Desktop Editors が表示されるので「インストール」クリックする。バージョンは 9.0.0 で、最新。
追加で必要となるソフトウェアの一覧が表示されるので「続行」をクリックする。
インストールが完了すると「起動」ボタンと「削除」ボタンが表示され、「起動」をクリックすると「ONLYOFFICE」が立ち上がる。
「ONLYOFFICE」の初期画面。画面に直接ファイルをドラッグすると、自動で開く。
「PPTX」を開いた画面。
左下の「メニュー」から「オフィス」を開くと、「ONLYOFFICE」のアイコンが追加されているので、ここから起動出来る。
3. フォントの追加で文字崩れを解消
WindowsのPowerPointで作成した「PPTX」ファイルを開いてみると、一部で文字が崩れている。
フォントに「Meiryo UI」が使われており、Linux Mintには「Meiryo UI」フォントがインストールされていないのが原因である。
同様に、WindowsのExcelで作成した「XLSX」ファイルを開いても、一部で文字が崩れている。
Linux Mint に Meiryo UI フォントを追加する。(/usr/share/fonts にフォントを配置)
参考:
PowerPointでの文字崩れが解消する。
同様に、Excelでの文字崩れも解消する。
4. Microsoft Office との互換性
高い互換性の理由 ONLYOFFICEは内部的にMS Officeと同じ**Office Open XML (OOXML)**形式(.docx, .xlsx, .pptx)を標準として扱います。LibreOfficeなどが採用するOpenDocument Format (ODF)から変換するプロセスがない ため、情報の欠落やレイアウトの崩れが原理的に起こりにくいのです。
①.文書作成 (Word/DOCX): ● テキストの書式、段落スタイル、画像の配置、表、ヘッダー/フッターなど、ほとんどの要素が忠実に再現されます。 ● 変更履歴やコメント機能もMS Wordと遜色なく利用でき、共同作業もスムーズです。
②.表計算 (Excel/XLSX): ● 基本的な数式や関数は問題なく動作します。 ● グラフや条件付き書式、ピボットテーブルといった高度な機能も高い再現性を誇ります。 ただし、VBAで作成された複雑なマクロは動作しないか、互換性の問題が発生する可能性があります。これは、ONLYOFFICEがJavaScriptベースのマクロを採用しているためです
③.プレゼンテーション (PowerPoint/PPTX): ● テキスト、図形、画像のレイアウトは非常に正確に再現されます。 ● 画面切り替え効果(トランジション)やアニメーションも、一般的なものであれば問題なく表示・編集できます。一部の特殊な効果は再現されない場合があります。
■ 互換性の限界 ● 完璧な互換性を謳うのは難しいのも事実です。特に、以下のようなケースでは問題が発生する可能性があります。 ● 複雑なVBAマクロ: Excelの自動化などで多用されるVBAマクロは、基本的に互換性がありません。 ● 特殊なフォント: Windowsに標準搭載されているがLinuxにはないフォント(例: MS Pゴシック、游ゴシック)が使われている場合、代替フォントで表示されるため、見た目が変わることがあります。(これはフォントを別途インストールすることで解決可能です) ● 一部の高度な機能: WordのSmartArtの一部や、PowerPointの特殊なアニメーション効果などは、完全に再現されないことがあります。
4-1. 発生した互換性の問題
①. Microsoft Excel で設定した列幅(Column Width)や行の高さ(Row Height)が、ONLYOFFICE Spreadsheet Editor で開くとデフォルト幅に戻る。
✅ 表やグラフと組み合わされたセルでの列幅 が不正確に表示される。
②. Excel では .xlsx ファイルを保存する際に、**最後に表示されていたセルの位置(アクティブセル・スクロール位置)**の情報が .xlsx に含まれます。 しかし、ONLYOFFICE Spreadsheet Editor でそのファイルを開くと、 必ずシートの先頭(A1セル)から開く。
📌 Linux Mint 上の ONLYOFFICE には、「最後に作業したセルを記憶」する機能は備わっておらず、「保存したセル・行位置で再開する」ことはできない。
✅ 簡単な逃げ道。
.xlsx ファイルを開くと、
名前ボックス に前回保存時のセル番地が表示されるので、ここで「Enter」キーを押す。
「最後に作業したセル番地」にジャンプしてくれるので、ここからスクロールして作業を継続することが出来る。
4-2. 形式を指定して貼り付ける方法
①.コピーする。
②.貼り付けを実行すると、貼り付けオプションを示すアイコンが表示される。
③.このボタンをクリックすると、「形式を選択して貼り付け」と同じ操作が行える。
5. LibreOffice との比較における ONLYOFFICE の優位点
ONLYOFFICE の優位点 詳細
①. Microsoft Office との互換性が高い: ● 編集・保存時に再変換が不要。書式のズレが少ない。 ● SmartArt、図形、グラフ、段落スタイルなどの再現性が高い ビジネス資料のレイアウトが崩れにくい。
②. インターフェースがわかりやすい: ● Microsoft Office のリボン型UIをほぼ再現 ● Windowsユーザーの移行がスムーズ。 ● 日本語翻訳も比較的自然(LibreOfficeはメニュー項目にクセあり)
③. ファイルの外観が「そのまま」保たれる: ● フォント・段落・表・罫線・背景画像など、視覚的な整合性が非常に高い。 ● レイアウトの崩れに悩まされることが少ない。
④. クラウドとの連携がしやすい: ● Nextcloud や ONLYOFFICE Workspace との統合でWebベース共同編集も可能。 ● Google Drive、Dropbox、OneDriveとの連携機能もあり。
⑤. 商用利用でも安心: ● オープンソース版でも商用利用可能。
■ 注意点と制限: ● マクロやVBAには対応していない。 ● 旧形式(DOC / XLS / PPT)ファイルの再現性は完全ではない。
結論 : Microsoft Office のファイルを頻繁にやり取りするなら ONLYOFFICE を選択すべし。
6. ONLYOFFICE で NAS にあるドキュメントへのアクセス
Linux Mint における NAS のマウント方法。
NAS のマウント方法は、大きく分けて ● GVfs / gio を使ったユーザーレベルのマウント ● CIFS (カーネルレベルのマウント) を使ったシステムレベルのマウント の 2 系統に分かれる。
fstab (CIFS) 方式 と GVfs (gio mount) 方式 の違い 。
GVfs (gio mount) 方式でマウントすると、サイドバーにNASが表示されるので便利であるが ・・・ ONLYOFFICE デスクトップ版は GVfs に未対応 。
Linux Mint で Synology NAS にあるドキュメントを ONLYOFFICE で、開くことは出来るが、修正した結果を上書き保存することは出来ない。
gvfs の仕組みでは、アプリ側が「GVfs API」に対応していればファイルを直接読み書きできる。
しかし ONLYOFFICE デスクトップ版は GVfs に未対応 なので、NAS 上のファイルを「一時コピー」として開いてしまい、上書き保存することは出来ない。
✅ 解決策 → CIFS でマウントする 。 CIFS でマウントした /mnt/nas/ドキュメント.xxxx を ONLYOFFICE で開く → 「直接上書き保存」が可能となる。
NASの CIFS でのマウント要領
マウントポイントの作成。
sudo mkdir -p /mnt/nas
cifs-utils のインストール。
sudo apt install cifs-utils
コマンドを手動で実行して、設定が正しいかを確認する。
sudo mount -t cifs -o "username=nnnnnn,password=pppppppp,uid=1000,gid=1000,iocharset=utf8,vers=2.0" //<NASサーバー名>.local/home /mnt/nas
ls -la /mnt/nas 成功していれば、/mnt/nas ディレクトリ内に NAS の共有フォルダが表示される。
ポイント:SMB プロトコルのバージョン「vers=2.0」を指定しないとうまくいかない。
/etc/fstab の編集。
sudo nano /etc/fstab
# NAS 自動マウント設定
//<NASサーバー名 > .local/home /mnt/nas cifs credentials=/home/mint/.smbcredentials,uid=1000,gid=1000,iocharset=utf8,vers=2.0,_netdev 0 0
ポイント1:「.smbcredentials」は、認証情報をファイルで指定。 ポイント2:SMB プロトコルのバージョン「vers=2.0」を指定。
password に記号が含まれている為、認証情報をファイル化する。
sudo nano /home/mint/.smbcredentials
username=xxxxxx
password=yyyyyyyyyy
ファイルのパーミッションを設定する。
sudo chmod 600 ~/.smbcredentials
再起動後、うまくいっていれば、/mnt/nas ディレクトリ内に NAS の共有フォルダが表示される。
以降、 ディレクトリ「/mnt/nas 」にある ドキュメント.xxxx にアクセスする。 ONLYOFFICE で開き → 編集 → 直接上書き保存 がOKになる。
ディレクトリ 「/mnt/nas」にマウントされたフォルダーから、ファイルを選択して ONLYOFFICE でアクセスする。
以上。 (2025.07.07)